まちづくりプロジェクトを進める上で、行政との関わり方は大事です。
弊社でも行政と連携している事業が数多くあります。
行政の強みである、ネットワーク、インフラ、信用などに助けられることは多々あります。

行政は地域を経営する「非営利企業」と考えることができます。
非営利企業とは、利益を求める事が目的ではない企業です。

行政の収入源は主に税金です。
一般企業と違って稼ぐ事が目的ではありませんが、質の高いまちの環境を構築するには人、モノ、サービスが必要です。
住みやすいまち、魅力的なまちに成長できれば、人口が増えて経済が活性化し、税収が増えます。
税収が増えれば、ハードとソフトの両面からサービス拡充(投資)ができ、成功すれば、更に税収が増える好循環を生み出せます。

・保育費を無料にする
・医療費無料の年齢を引き上げる
・学校を改装し更に良い環境にする
これらの施策は、住民増による「住民税」の増収が望めます

・民間企業に対する事業補助で地域経済を活性化する
まちに企業が集まってビジネスが活発化すると「法人住民・事業税」の増収が望めます。さらに中心市街地が活性化すれば、土地の価値が上がって「固定資産税」による増収も期待できるでしょう。

行政はある意味で地域を経営し、投資と税収増の好循環を回して、より良い地域形成を目指しています。

こうして地域を経営する行政にとって、まちづくりは大事な事業の一つです。
住みやすいまち、魅力的なまち、観光客が訪れるまち、企業が儲かるまちなど、まちづくり活動が成功すれば、地域はお金も心も潤います。

ここで大切なのは、まちにとってソフトのまちづくり事業は、行政より民間の方が行いやすいということです。
 行政がまちづくり事業を進めようとすると下記のような弱点があります。

・概ね5年以内で人事異動があるため、事業を立ち上げた職員の熱意や成功や失敗のノウハウ、人脈をしっかり引き継げない。
・公平性が求められるため、尖りにくい、生産性が生みだしにくい。
・組織が大きくて合意形成の機会が多く、「尖った企画」が生まれにくい。スピード感も遅くなりがち。
・行政はプレイヤーでは無い為、やらない人がやる事を決めても実現しにくい。

これらの理由から行政にとって、民間のまちづくりプレイヤーは貴重なクライアントです。まちづくりプレイヤーにとっても、民間にはない能力がある行政は貴重なクライアントです。目指すべきところは同じである以上、良好な関係構築が大事です。

行政と良好な関係を築く上では、行政という「組織」を知ることが大事です。
「行政の担当者と話をして賛同してくれたけど、結局動いてくれなかった。行政はダメだ。」
たまにこういった類の話を聞きます。 
現場の担当者が理解を示してくれても、実際の支援決定に至るまでにはいくつもの壁があります。
担当者⇒上司決済⇒課長決裁⇒財政部局決済 ※上司の壁は複数の場合もあります。
上司がダメと言ったら基本ダメ、一般企業でも同じことです。
私が行政職員になっても同じ、組織に入れば組織のルールに従うしかありません。
さらに行政には、その自治体に入る税金の配分を司る財政部局の壁があります。課外の承認が必要なのです。ここで「待った」が入る事も多いです。
現場の担当者は熱意をもって本気でやっていることがほとんどです。
担当者が「やりたい」と思っていても、組織上ダメなことも多々あります。
行政という組織をまず理解する事が大事です。

行政との連携には、メリットとデメリットが生じます。
メリットとデメリットを差し引きして、どちらが多いかを考える事が大事です。

行政は税金を集めた予算で民間の取り組みを支援する場合、明確な目的を定めて、その目的を達成するための要件を複数設定します。その行政予算を活用したいのであれば、その要件に沿う必要があります。
ただ、要件に沿う事が、自分たちが進めたいまちづくりの方針に反する場合も出てきます。要件に沿うことで事業の方針がぶれる、手間が増えるなどのデメリットが発生せず、メリットの方が勝るのであれば、行政予算を活用すればよいでしょう。

要件の内容に不満を感じる人もいるでしょうが、行政の組織内で予算を通すためには、それらの要件が必要だったいう事を理解してください。
 行政予算を獲得しようと自信満々の計画書を提出しても不採択になることもあると思います。その計画書の意義を理解できなかった行政の責任ではなく、行政の要件に合致する計画書になっていなかったかどうかを反省してみてください。
 
例えば、行政とまちづくりプロジェクトの連携について協議している場面を想定してみましょう。自分たちが進めたい民間プロジェクトの目的は「観光活性化」です。ただ、行政側の予算は限られています。観光活性化を目的に活動している事業者は数多く、その全てに予算を配分することはできません。ただ、その自治体は新幹線の開業を間近に控えているため、新幹線開業に関連した事業であれば応援しやすいため、支援には「新幹線開業の盛り上げ」という要件を加えていました。自分たちが目指している「観光活性化」に「新幹線開業」の要素を加えても事業がブレないのであれば、行政側の要件に沿うことで応援してもらえる可能性がアップします。
逆に、「新幹線開業」の要素を加えることで事業の軸がブレるなどのデメリットの方が勝る場合は行政と連携しない方が良いです。


行政も人が運営しています。
人が進め、人が決めます。
企業と同じです。

あなたが行政職員なら、どの人と応援(連携・支援)したいですか?

1:知らない飛び込みできた人
2:実績のない知っている人
3:実績のある、知らないえらそうな人
4:実績のある知らない人
5:実績のある知っている人
6:実績のある知っている謙虚な人
7:実績のある知っている謙虚で情熱的な人

数字が上がるほど、応援したいと思うのが一般的だと思います。
行政に応援したいと思ってもらうことが重要です。 

行政には多くのまちづくりの相談が持ち込まれます。
その中で、あなただけを特別に応援することはできません。
よほどの実績がある場合は別ですが、まだ何の活動実績もない前から応援してもらうことは基本難しいです。
行政と連携し、応援してもらいたいなら、まずは行動して結果を見せることが大事です。結果を示して、行政にこの人ならやれる、この人なら信頼できると思ってもらえれば、行政に限らずに様々な人が応援してくれるでしょう。 

企業に100万円の協賛金を頂く際にも条件や要望があるはずです。もし企業の担当者がエラそうであっても、その得られる協賛金に対して「条件・要望が事業に影響するデメリット」「我慢する部分」を考慮して協賛を得るかどうかを考えるかと思います。 

行政から100万円の支援を得るとしたらどうでしょうか? 
自分も納税者の一人であるからか、企業と同じ対応や考え方ができない人が多いように感じます。
私にとっては企業も行政も全く同じです。
対価を得るプロのプレイヤーになりたいのであれば、行政も企業と同じクライアントです。お金を頂く以上、プロとしての意識を変える事が重要です。

そもそも、自分のまちは自分で作るべきもの。
まちづくりの事業は、行政よりも民間が行った方が良い事が多い点は先に述べた通りです。行政とは基本的には、まちづくりのプレイヤーを応援する立場だと私は考えます。
演劇で言うと、ステージや音響、照明などの環境を提供するのが行政の役割で、演者は民間のプレイヤーです。行政は応援してくれる一つの事業者として考えています。その意識があれば、行政が応援してくれたら「ありがとう」の言葉が出てきます。

行政は「地域を良くする事が仕事だ」と思っている方、その通りです。
ただ、地域を良くする仕事と、あなたの事業を応援する事は必ずしもイコールではありません。どの事業も成功する可能性はありますが、まずは行動し結果をだす。依存しない姿勢(考え)が大事です。
「地域を応援する仕事=あなたの事業を応援する事」。
行政にそう評価してもらえるよう、活動を行っていきましょう。
成功に向けて行政との連携は、大きな一助になります。


この記事はノウハウの一部を簡潔に紹介しております。
手法・事例の詳細は文字では全て書ききれない為、省かせて頂いております。
伴走支援では、プレイヤーの事業を通してノウハウを活用し支援・育成を行っております。